信口開河 xìn kǒu kāi hé

注音符號 ㄒㄧㄣˋ ㄎㄡˇ ㄎㄞ ㄏㄜˊ

元日から政治討論番組を見ていたら、総統の元旦の挨拶とか、各地方首長が国旗掲揚式でどうふるまったかが俎上にのぼっていました。そして、やはり例の高雄市長がダントツで注目を集めております。

ある論客がこのとにかく口のうまい高雄市長について、ディズニーランドを誘致するなど数々の大風呂敷を広げてきたがだいたい実現するんかい、というようなことを「信口開河」という形容詞を付けて語っていました。Google台湾でニュース検索をかけると見事に高雄市長の記事ばかりヒットする。みんなそう思ってるってことですね。さあみんな、本人に言おう。

で、この「信口開河」ですが、教育部の辞書では「考えなしに適当なことを言う」と説明が添えられております。口から出まかせを言うということですね。日本語のWeb辞書で「ちゃらっぽこ」なんて出ていますが、口を信じて河を開くんですよ、スケールがでかい。

で、高雄市長が恒例の国旗掲揚式に何を言ったかというと。

❝忍住想掉淚的感動❞――涙をこらえ切れないような感動。そうなのか。

そしてここがすごい。
❝看到國旗冉冉上升,很多好朋友一定很感動,大家熱愛國家,但好久好久都沒有這種感覺,尤其去年選舉,看到國旗飄揚時,不少人熱淚盈眶,我們好多人好久好久沒有愛自己的國家了,或者熱愛國家的感情被壓抑住❞

「国旗がゆっくりとのぼって行くのを見ながらたくさんの人がきっと感動していることでしょう。みんな国を熱愛(あえてこう書く)しているのに、ずいぶんと長い間このように感じたことはありませんでしたね。とりわけ昨年の選挙で国旗がはためくのを見て、少なからぬ人々が目頭を熱くしたことでしょう。わたくしたちは本当に長い間、自分の国を愛したりすることがありませんでした。あるいは国を熱愛する気持ちを抑えつけられていたのでしょう。」

どうでしょう。わが祖国で記念小学校を作るからと持ち上げられていた首相がなんとか会議の集まりで言ったりするかも…。ですが、あのお方は原稿がなければこんなことをスラスラとは言えないと思いますが。

歯の浮くような内容ですが、映像を見るとさらにすごいです。すごいというのは、もし感動する側にいたとしたらものすごいアガる感じもするかも、と思うからです。肝心の市政については何か言っているようで何も言っていないのに。クサいけど高揚する、そんな演説を立て板に水のごとく、まさに「信口開河」よろしくやってのける人物が台湾屈指の地方都市の首長を任されている、そのことにおいてもすごいと思います。


一方、総統はあいさつで結構重要な発言をしていたのですが、これはこれでいつものごとく大変平板な一本調子で、気を付けてないとつい「ふーん」って聞き流してしまうという。ある論客が「総統にこの高雄市長の口才があればのう」と言っていましたがまったく同感です。まあ仮にそんなことがあったらポピュリズムの危険性と表裏一体なんですけどね。